脊髄損傷は病気じゃない

2008年2月 2日 10:22

奥野

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昨年秋から、脊髄損傷で人工呼吸管理となった患者さんを在宅で担当しています。
私より一つ年上の青年ですが、彼にはいつも驚かされることばかりです。


一緒に少しずつ薬を減らしましょうと言っているのに、
次に往診にうかがったときには約束した以上に薬を減らしておられることもしばしばです。

ある時は、自己判断で薬をやめたため、
夜中に起立性低血圧(立ちくらみ)を起こされました。
私も怒ることはしません。
「血圧下がっちゃいましたね」とだけ言うと、
照れくさそうにニコッと笑ってくれます。
彼に言わせると、「自分は病気じゃないから薬は飲みたくない」のだそうです。

また、正月明けて初めて往診にうかがったときは、
「元日に立ってみた。血圧も下がらなかったし、大丈夫だった」と、
悪びれる様子もなく教えてくれました。
車イスに座ることさえ想像もしていなかったものですから、超ビックリです。
「けっこう無茶しますね」と言うと、
また照れくさそうにニコッと笑ってくれます。


生活は皆のサポートを必要とする彼ですが、
意志は誰にも管理されることはありません。
退院されて、本当に表情が変わったなという実感を、
われわれも持ち始めていました。


彼の自主リハビリは、今年に入ってからさらに本格化し、
呼吸器を外して呼吸の練習をしたり、
車イスに座って腹筋のトレーニングをしたり、
首を動かすトレーニングをしたりと、
いろんなことにチャレンジし始めています。


さすがに心配になった訪問看護師やケアマネージャーさんから、
どこまでリハビリをしてよいか、相談したいと持ちかけられ、
相談の場を設けることになりました。

その場で彼が言ったのです。

「脊髄損傷は病気じゃない。怪我だと思っている。
怪我は治るもの。だから、今年1年かけて全快を目指す」と…

名言です。

彼は、怪我をする前は格闘技をやっていて、
以前は筋肉ムキムキだったと言っていました。
そして、練習や試合であちこち骨折しても、
病院には行かずに治してきたのだそうです。
リハビリをはじめて、少しずつ、
足の感覚や動きがみられるようになってきているとも言っていました。

怪我を負ってから1年以上、
あちこちの医療機関でセカンド・オピニオン(主治医以外の医師の意見)を
聞きながら、自分の現状を少しずつ受け入れて来られたハズです。

そんなバックグラウンドをもった、彼のこの言葉と、
それを暖かく支える家族や恋人の姿に、
医療者としてのハートを揺さぶられました。

正直、回復できるかどうかは解りません。
しかし、私も、ともに彼の想いを支えたいと思いました。
「人工呼吸やリハビリの安全性など、
医療面での安全を確保するということで、
あなたをサポートします。一緒に頑張りましょう」

彼の意思表明に応える形で、私が意思表明をしたところで、相談の場は終わりました。

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