真のニーズを探求せよ!
相手の口から出てくる言葉が、時として真実を捉えていないことがあります。
今回は、それを"ニーズ・デザイア・デマンド-モデル"を使って考えてみたいと思います。
先日、診療所の事務長・師長・私の3人で、今後の診療所の診療展開について議論する場を持ちました。
通所リハビリのことにも話題は及びました。
介護にウェイトをおいて通所リハビリを利用されるAさん。
日常生活は全て介助を要する状態です。
当院の利用を希望されるのならば、断る理由はないという意見も当然出てきます。
しかし本当にそれがベストの答えでしょうか?
Aさん、というより、ご家族様が当院の利用を希望される理由、期待される中身が必ずあるハズなのです。
例えば、介護負担の軽減かもしれません。
だとしたら、その希望を叶える方法は他にもあるハズです。
介護負担を減らしたい理由も必ずあるはずです。
他にやりたいことがあるのかもしれません。
だとしたら、介護負担を減らさずにそれを叶える方法だってもしかしたらあるかもしれません。
根底にあるニーズが、かなりいろんな影響を受けて、形を変えて「大曲の通所へ」という要望として出てきているに過ぎないわけで、重要なことは、その根底にあるニーズに応えてあげることだと思うのです。
私は、このことを解りやすく伝えるために、リハビリで有名な上田敏先生の"ニーズ・デザイア・デマンド-モデル"を利用させて頂きました。
なぜこのデマンドが出てくるのか、真のニーズは一体何なのかを探る優れた手法として、家庭医療学的なアプローチが有効だと私は考えています。
"疾患"は同じであっても、本人にとっての"病い"の体験は個別のストーリーがあるという考え方や、家族・地域やライフサイクルといった患者様の周辺状況を知ることで全人的に理解しようとするアプローチ法です。
真のニーズを知るためには、その人の個別性と要望の背後にある状況を理解し、本当に必要なものは何かを推し量ることが必要不可欠だと思うのです。
この手法を、"患者中心の臨床技法"といいます。
この技法は他のコンポーネントも含んでいるのですが、ここでは割愛させていただきます。
"ニーズ・デザイア・デマンド-モデル"は概念であり、"患者中心の臨床技法"はニーズを探るための方法論と私は捉えています。
さて、この"ニーズ・デザイア・デマンド-モデル"と"患者中心の臨床技法"、実はいろんな場面で活用できる、極めて普遍性の高い概念と方法論です。
例えば上司と部下。
部下から「○○して欲しい」という要望があったとします。
上司としては到底聞き入れられない要望だが、なぜそのような要望なのかをよくよく話を聞いてみると、問題の根底は実は上司も部下も同じ事で悩んでいるのかもしれません。
例えばマーケティング活動。
アンケートではデマンドしかわからないことが多いと思うのです。
地域の皆さんから、要望としては出てこないけど、本当に困っていること、必要としていることは何なのかを探っていくことが必要です。
医療においてそれを行う手法が"地域診断"です。
地域診断については、別の機会に記事にしたいと思います。
要望(デマンド)に応えることを顧客第一主義とはき違えてしまうと、その時々で変わるデマンドに振り回され、お互いに不幸な状況に陥りかねません。
上司の要求・部下の要求=真のニーズと捉えてしまうと、同じくお互いに不幸な状況に陥いるかもしれません。
住民の要求・要望=真のニーズと捉えてしまうと、舵取りを誤ることもあるかもしれません。
要望(デマンド)に耳を傾けることはとても大事です。
コミュニケーションの始まりは、相手を受け止めることから始まります。
そして、要望は時として真実を表していることもあります。
しかし、口から出てくる言葉の裏にある真実を探る姿勢と技術こそが、お互いを幸福に導く真のコミュニケーション、真の仕事だと思うのです。
Text by奥野(大曲診療所長)





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