在宅医療は自己実現のお手伝い
■医療の目的は何か?
先日毎日新聞島根版の「ご近所のお医者さん」という連載コーナーのインタビューを受けました。
私と年齢もそれほど変わらないであろう記者の方が、最も興味を持たれたのは"看取りの医療"でした。
医療の目的は病気を治すこと、というイメージを持っておられたため、そうでない医療の姿がとても新鮮だったようです。
病気を治すことが目的ではないとしたら、看取りの医療の目的は何なのか…
私は、治療を目的とする医療も看取りの医療も目的は一緒だと考えています。
その目的とは、自己実現のお手伝いです。
命を救い、健康を取り戻すことは目的ではなく手段です。
その結果、患者さんには何がもたらされるのか? そこが大事です。
社会復帰して、自分らしく精一杯生きることが大事です。
看取りの医療の目的は何か?
苦痛や不安を取り除いたり、残された時間でやりたいことができるように医療面で支えることです。
最期の瞬間まで、その人らしく生き抜いてもらうことです。
■私が在宅医療に力を注ぐ理由
それは、在宅で過ごすということが、自己実現にとって非常に重要な意味を持つからです。
自己実現とは、自分の能力を精一杯発揮して自分らしく生きることです。
自己実現のためには、生涯に渡って、最期の時まで、自分が生まれてきた意味や自分の使命を探求し、自分の能力を発展させて行かなければなりません。
自己実現の重要な要素のひとつは、生まれて来た意味や使命、能力を発揮する目的は、決して自己完結するものではなく、人との関わりの中において意味を為すものだと思うのです。
人との関わりとは、誰かの役に立つこと、誰かに影響を与えることです。
もう一つの重要な要素は、自立と自律です。
自立とは自分のことが自分でできるということ、自律とは自分で考え、自分で決め、決定に責任を持つことだと考えています。
その人がその人であるための重要なものが、在宅には沢山あります。
住み慣れた地域、近所の人たち、住み慣れた家、家族…
そこには、自分と関わる人たちが大勢います。
賞状や盾、自分の作品、趣味の品々、仕事の本…
そこには、自分の尊厳を取り戻させてくれるものが沢山あります。
起床の時間も食事の時間も、食べたいものも、薬を飲むか飲まないかも自分で決められます。
「どうぞ"遠慮"なさらずに、お茶でも飲んでってくだい」という場面は日常茶飯事です。
在宅という医療の場では、私たちは"遠慮"する立場なんですよね。
在宅で過ごすことの価値を患者さんやご家族と一緒に感じながら、そのお手伝いをさせていただく、そんな医療の現場が在宅医療だと思うのです。
もちろん、在宅での療養が必ずしも自己実現につながるとは言えないケースもあるでしょう。
治す医療が必ずしも自己実現につながるとは言えないこともあるでしょう。
私たち医療人は、常にそのことを心に留めながら、自己実現というゴールを患者さんと一緒に目指していくことが必要なのだと思います。
Text by奥野(大曲診療所長)












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